中小企業が陥る社長依存組織の闇と脱却法
- 2021.4.22
- 中小企業の課題
目次
- 「社長依存組織」とは?その危険性と陥りやすさ
- 「社長依存組織」に見られる症状とは?
- 社長依存が引き起こす4つのリスク
- 脱社長依存!負のスパイラルから抜け出す突破口とは?
- 自社の将来への一歩を踏み出すために
中小企業経営者の深刻な悩みとして最も多く挙がることの1つが「組織の社長依存」です。社長自身が意図したわけでもないのに気づけば依存体質となり問題が深刻化していた、というパターンが多く、経営者にとっては注意が必要です。本記事では、社長依存組織に見られる症状・リスクや脱却のための突破口をご紹介していきます。
「社長依存組織」とは、その文字通り、本来であれば配下の社員たちが自ら考えて判断・実行するようなことも社長に依存してしまうなどの傾向を持つ組織をイメージします。まずはなぜそんな組織が危険なのか、そしてなぜ陥りやすいのかを整理しておきましょう。
なぜ危険なのか
なぜ危険なのか、その詳細は後述の「4つのリスク」で触れますが、ひと言で示すと「経営上のリスクを高めることに繋がる」からです。社長依存が強いということは、社長がいなくなってしまったら業務が回らずに現場が崩壊する、ということに繋がります。
もし自分が突然倒れたとしたら・・・、そう考えるとぞっとする方も多いことでしょう。しかし、人生で何が起こるか完全に見通せない中、可能性としては全くありえない話ではありません。
さらに、社長の現場への介入が増えることにより、本来の経営者としての仕事、将来に向けた事業構想や経営計画の検討に手が回らなくなることで、会社を経営上の危機に向かわせてしまう可能性すらあるのです。
なぜ陥りやすいのか
一方、上記の危険性が何となく認識できていても、気づくと陥ってしまう経営者の方も多くいらっしゃいます。それは、以下の事情などが影響していると考えられます。
- 全力で結果を出そうとするほど、自分が決めて手を下した方が事業推進のスピードが速まるし、組織の統制が取りやすいという利点が得られるから
- 誰よりもこの会社のことを真剣に考え抜いてきたがゆえに、どうしても口出してしまいたくなるから
事業を成長させたい、会社を良くしたいという善意からの行為が社員の依存を促すことに繋がってしまうとは、何とも皮肉なものです。
ここまでお読みになられて、「うちの会社もそうかも・・・?」と思われた方もいらっしゃるかもしれません。ここではもっと具体的にイメージができるように、どのような症状が見られたら社長依存の危険信号か、具体的なチェックポイントを挙げていきます。当てはまるものが多いほど、社長依存組織としての該当度が高いと解釈できます。自社の状況を確認するものさしの1つとしてご活用ください。
- ● 現場の日常業務の判断や改善案出しまで社長が巻き取って行っている
- ● 社長自身が出向かないと新たな取引先やパートナーの開拓が進まない
- ● 会議で意見を求めてもシーンとしてしまう、「社長に同意です」が多い
- ● 管理職はちょっとしたことでも「どうしたら良いでしょう」と社長に判断や指示を仰いでくる
- ● 現場のトラブル、顧客接点のクレームなどが起きたとき、当事者たちは受け身・他責で社長頼みになる、または、事が大きくなるまで対応を曖昧にしている
- ● 従業員が社長の意向や顔色をうかがって仕事をしていると感じる
- ● 社長自身が常に目の前に起こる問題への対応に追われている
- ● 次を任せられる役員・部長がいないと感じる
では、組織の社長依存度が高まるとどのようなリスクが発生するのでしょうか。前半で集約的にお伝えしましたが、改めて代表的なものを具体的に見ていきましょう。
現場自らで問題解決ができないリスク
社長が良かれと思い現場に入って判断を巻き取るほど、現場自身が考えて問題解決に向けた試行錯誤を行い、今後の糧となるスキルやマインドを得る機会が減っていきます。
さらに、自ら考える必要性を感じにくくなり、問題意識や改善意欲の衰退にも繋がり、物事や組織への主体的な働きかけが減り、指示されたことをそのままやるだけになってしまいます。
また、社長の介入により現場の指揮命令系統が崩れるため、本来マネジメントを担うはずの管理職の機会が損なわれて、よりプレイヤーに近づいてしまいます。
かと言って、この依存状態の中で急に社長から「目線を上げてほしい」「アイデア・改善提案を出してほしい」とお願いしたとしても、現場はどうして良いか考えられないため、結局社長が担う、といった結果になりがちです。
顧客劣後の判断・行動による信頼低下リスク
社長が基準・解となって介入・指摘を行うほど、現場はお客様に向き合うことを後回しして社長の発言を絶対視して合わせるような判断・行動を無自覚に取りやすくなります。
たとえ「お客様第一」と説かれていたとしても、自分たちでその意味を解釈して行動するよりも、社長が答えだからなぞって反映させれば良い、という意識が働き、結果、顧客に本当に必要なことを責任を持って考える・行動することから遠ざかり、顧客との信頼関係の低下を招く可能性もありえます。
人的資源(後継者)リスク/ノウハウ蓄積されないリスク
社長のみに全ての意思決定が集中する状態が続くと、社長しか見えない、分からないことが増強されるスパイラルに入り、他者が意思決定に関わるハードルがより高まっていきます。
社長は徐々に自分の目線と乖離が進む他経営幹部や管理職に不安が募り、信頼して任せたいがブレーキがかかる、後継者としてなかなか引き上げられない、というジレンマが起きやすくなります。
それが続くと、今度は幹部・管理職側にも不安や不満が蓄積されるようになります。何らかのきっかけで退職に繋がれば、社長は現場の穴埋めに奔走せざるを得なくなります。
このような状況まで至ってしまうと、組織としての知見やノウハウが蓄積されず、社長しかできない状況に拍車がかかってしまいます。
社長がいないと回らない、事業運営リスク
このように、社長のみに負担や責任が集中し続ける状態が続くと、社長不在では業務が回らずに現場が崩壊する、ということに繋がります。
さらに、本来の経営者としての仕事、将来に向けた事業構想や経営計画の検討に手が回らなくなることで、会社を経営上の危機に向かわせてしまう可能性も高まります。
前述の通り、組織の社長依存体質を深刻化させてしまうことで、指揮命令系統や問題解決能力を弱め、顧客との関係性を悪化させ、人の成長やノウハウの蓄積を妨げて、長期的には会社を危機にさらすことになりかねません。
これらを回避するためには、一時的にコンフリクトや伸び悩みが起きたとしても、脱社長依存組織に向けた歩みは止めないと決めて、例えば以下のような打ち手を掛け合わせて継続していくことが効果的です。
必要な経営情報や意思決定内容を丁寧に共有する
まずは経営上の情報や意思決定内容を、それらの背景も含めて経営幹部や管理職に丁寧に共有していくことが重要です。また、経営理念・ビジョン・経営計画などは、一方的な数値伝達や訓示としてではなく、社長の思いやエピソード等も含めてリアルに伝わるように共有できることが望ましいです。
部下の認識や理解度を確かめ、問題意識や意欲を引き出すことを意識して目線やベクトルを合わせていきましょう。自分はちゃんと伝えたはず、そう思っても実際は想像以上に伝わっていなかったり、忘れられたりしているものです。だからこそ意図的に取り組みたいステップとなります。
期待成果・役割範囲を決め、権限移譲を進める
ここが脱社長依存を進める一歩を踏み出すための最重要ポイントとなります。これまで自分が巻き取ってきたことを棚卸しし、階層ごとに求める成果、権限、責任、判断基準・外したくないポイントを明らかにして権限移譲を進める必要があります。できれば人事評価制度にも反映して、一過性のものでなく基軸としておきたいものです。
なお、これらが具体的・明確にできていないと、すぐに元のやり方に逆戻りしてしまいかねません。また、ここでも認識齟齬が起きないように丁寧に理解を得ていく関わりが重要となります。
自分たちで振り返り学習する仕組みを組み込み、意思決定基準を身につける
権限移譲を行うだけでは、もちろん部下の行動はすぐに変わりません。そこから彼らが何を考え意図し取り組んだか、そのプロセスと結果をどう捉えて次に生かすかの積み重ねが肝となります。これらは日常業務に追われる中で本人の努力に頼るだけでは進みません。
会議体、面談やツールなど、定常スケジュールの中に振り返りとアクション検討を行う「仕組み」を設計し機能させていくことで、取り組みを促していきます。その中で、自分たちの判断・行動を題材にして対話と認識合わせを繰り返すことで、社長に頼らずに意思決定するためのポイントを獲得していきます。
社長も定期的に自身の意識・思考と行動を振り返る
これまでのやり方を変える際には迷いや失敗がつきものです。社長自身がこれで良いのかと不安になったり、つい手出ししたくなることもあるはずです。時に我慢を続けなければいけない時もあるかもしれません。
そんな中で歩みを持続していくためにも、定期的に組織に対する自身の意識・思考と行動を俯瞰して振り返り、ブラッシュアップを重ねることをお勧めします。
自社の将来のために、脱社長依存は優先度の高いテーマだと言う経営者の方は多くいらっしゃいます。
このテーマはお互いに染み付いた慣性を乗り越えることが必要なため、残念ながら一朝一夕で成果が出るようなものではありません。しかし、途中で止めずに着実に継続的に進めることで、確かな手応えや変化、そして、経営的成果へと繋がってきます。
ただ、いざ進めようとすると、「具体的に何をやれば良いのか」「うちの特殊事情にはどう対応したら良いのか」「もっとスピードアップできないのか」など、様々な疑問や迷いが浮かんでくるかと思います。
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